2026.10.1

部下が本音を話してくれない。そんなとき、聞き方より先に考えたいこと。

話さないのではなく、「話せない」理由があるかもしれません

「何か困っていることはある?」

そう聞いても、

「特にありません。」
「大丈夫です。」

という返事で終わってしまう。定期的に部下と話す時間を実施しているのに、なかなか話が広がらない。


「何かあったら相談してほしい。」
「もっと部下の力になりたい。」

そう思っているのに、どうしたらいいのかわからない。そんな経験はありませんか?

もちろん、本当に困っていることがないのかもしれません。でも、もし何かを抱えているのに話せないのだとしたら。

そこには、どんな背景があるのでしょうか。

私は、質問の仕方だけでなく、上司と部下の関係にも目を向けたいと思っています。


部下が本音を話しにくくなる、3つの背景

本音が話しにくい背景

① 評価を気にして、本音を言えない

上司は、部下の仕事を評価する立場でもあります。そのため、部下はこんな不安を感じているかもしれません。

「弱さを見せたら、評価が下がるかもしれない。」
「こんなことも分からないのか、と思われるかもしれない。」

上司にそのつもりがなくても、部下にとっては、何気ない会話が「評価される場」になっていることもあります。

② アドバイスが、考える時間を奪っている

部下が悩みを話してくれたとき、

「それなら、こうしたらいいよ。」
「私だったら、こうするかな。」

つい、そんな言葉を返してしまうことはありませんか。

早く力になりたい。

何か解決策を伝えたい。

そんな思いからの言葉でも、部下はまだ、自分の気持ちや考えを整理している途中かもしれません。

すぐに答えを出さず、まずは相手の話を最後まで聴くことも大切だと思います。

③ 「分かってもらえない」と感じている

人によって、考え方も、大切にしていることも違います。自分にとって当たり前の関わり方が、相手にとっても心地よいとは限りません。

部下の話を聞いたとき、

「どうしてそんなふうに考えるんだろう。」
「普通はこうするものじゃないのかな。」

そう感じることもあるかもしれません。

でも、その何気ない反応が、相手に「自分の考えは受け入れてもらえない」と感じさせている可能性もあります。

もちろん、これらがすべての人に当てはまるわけではありません。

ただ、上司が「話していいよ」と思っていることと、部下が「話しても大丈夫」と感じていることは、必ずしも同じではないのだと思います。

だからこそ、部下にどう話してもらうかだけでなく、自分自身が普段どのように相手と向き合っているかにも目を向けてみることが大切なのかもしれません。


本音を聴くために、自分からできること

「もっと本音を話してほしい。」

そう思うほど、どう質問すればいいのか、どんな言葉をかければいいのかを考えるものです。

でも、ここで一つ、考えてみてほしいことがあります。

「あなた自身は、部下にどこまで心を開いていますか?」

上司だから、しっかりしていなければ。
弱さや失敗を見せてはいけない。

そんな思いから、自分の気持ちや考えを伝えることを控えていないでしょうか。

もちろん、何でも話す必要はありません。

ただ、ときには自分の迷いや失敗を伝えることが、相手にとって「ここでは自分も正直に話していいんだ」と感じるきっかけになるかもしれません。

相手に心を開いてほしいと思うとき、まずは自分から少し心を開いてみる。

そこから始まる関係もあるのではないでしょうか。


話さないのではなく、「話せない」理由があるかもしれません

会社員として働いていた頃、私は部下との最初の対話で「こってり自己紹介」という時間をつくっていました。まず、私自身のことを30分ほどかけて話します。

どんな経験をしてきたのか。
何を大切にしているのか。
どんなことで悩み、失敗してきたのか。

私の場合は、仕事での成功や失敗だけでなく、職場でパワハラを受けた経験や、そのときに感じたことも話していました。

そして、その後に相手のことを知る時間をとる。もちろん、話したくないことまで話してもらうわけではありません。

上司としての経歴を紹介するのではなく、一人の人として、お互いを知る。

そんな時間を大切にしていました。

その関わりの中で、忘れられない出来事がありました。あるとき、一人の部下が、大きな問題につながりかねない仕事のミスをしました。

もし私が同じ立場だったら、数日間、報告をためらっていたかもしれない。そんなミスでした。でも、その部下はすぐに報告してくれたんです。おかげで早い段階で対応でき、大きなトラブルになるのを防ぐことができました。

対応が終わってから、私は尋ねました。

「どうして、すぐに話してくれたの?」

すると、最初の「こってり自己紹介」がきっかけだったと教えてくれました。

「この人には、話しても大丈夫だと思った。」

その話を聞いて、私は驚きました。

自分から心を開いたことが、相手にとって安心して話せるきっかけになっていた。

何より、困ったときに安心して話せる相手だと思ってもらえていた。

そのことが、何よりも嬉しかったんです。

もちろん、自己紹介だけで信頼関係ができたとは思っていません。その後の日々の関わりもあったと思います。

でも、この出来事は、私にとって大きな気づきになりました。自分から心を開くことには、相手との関係を変える可能性があるのだと。

そして私は、その手前に、自分自身への信頼もあるように感じています。

自分の弱さや失敗をどう受け止めているか。
相手にどう思われることを恐れているのか。

そんな自分自身の気持ちに目を向けることも、心を開く一つのきっかけになるのかもしれません。



最後に|話させることよりも、話せる関係を

部下と話すときに、部下が本音を話してくれない。

そんなとき、質問や聴き方を工夫することは、もちろん大切です。

でも、その前に。

「自分は、相手にどんな姿を見せているだろう。」

「自分自身は、相手に心を開いているだろうか。」

「困ったときに、安心して話せる関係を育てられているだろうか。」

そんな問いを、自分自身に向けてみる。

そこから、見えてくるものもあるのかもしれません。

本音を話すかどうかは、相手が選ぶこと。だからこそ、無理に聞き出すのではなく、必要なときに安心して話せる関係を大切にしたい。

話させることよりも、話せる関係を育てること。

次に部下と話すときは、質問を一つ増やす代わりに、自分自身のことを少し話してみる。うまく話そうとしなくても、特別な言葉を用意しなくても大丈夫です。

まずは、あなた自身の素直な一言から始めてみませんか。